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生存報告になりつつ、Photoとか読書メモとか日々のこと。
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渡辺淳一著の 「廃鉱にて」 に収録されているタイトル作品。
北海道のとある炭鉱にて、ある一人の妊婦さんのお話です。

女の人の生命力はすごい、という、渡辺氏の力説が溢れていて、自分が読んでも、あぁ……だめ、イタイ、イタイ、と言ってしまいそうな姿を (主人公の女性に対する畏怖と不気味さを併せ持ちながら) 最後に残るのは母となった千代の明るい笑顔ばかりが印象に残りました。
女性だから逞しいのではなく、千代だから逞しいのですよ、きっと、と心の隅で思いながら。

廃屋となった炭鉱長屋。かつて千代が瀕死で眠っていた部屋の跡からすくっと伸びたぺんぺん草。
北の涼しげな風に吹かれる夕暮れ時の空が、鮮やかに思い浮かんだのでした。
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群来と書いて 「くき」 と読みます。
日本海に押し寄せるニシンの大群が産卵して、海が白くなることを呼ぶそうです。

病院の本棚に見つけた なかにし礼著 の 「兄弟」 の中に、増毛 (ましけ) に押し寄せた群来のくだりがあり、ふとこれはファンタジーだと感じました。

冬の北海道。海の潮風と生臭い魚の匂い。
網にニシンが入ったなら一日で100万の稼ぎになる、と言って三日間の網代(かかった魚の権利)を買った主人公の兄は、勝手に祖母の家を担保にして30万のお金を借りる。終戦直後、1945年(昭和20年)頃、米10kg 6~150円 という時代で100万の価値は想像できないのだけれど。群来を描写した60年前のリアルは今の空想世界だと感じるのです。

小樽のニシン御殿を見に行ったこともあるし、番屋を見学したこともある。けれどそれはあくまで博物館としてで、漁師が寝泊りして山のような魚に溢れた世界じゃない。
乱獲か環境の変化か近年ではほとんど魚が取れなくなり、私が知るニシンといえばビニールパックに入った切り身程度です。この物語の世界はこの地に存在してないのだと……。


今朝の新聞に、ここ数年、ニシンが獲れ始めていると載っていました。
三年前には50年前の群来を思い出させるような豊漁で、その当時の稚魚が確実に帰ってきているらしく、来年以降では再び群来が見られるかもしれないとの事です。

網目を大きくして若い魚を逃がす、サケのように稚魚を放流する。昭和20年代のような泥の匂いはないかも知れないけれど、四月になる前に一度、北の海を見に行くのもいいかもしれないと、病院の窓際で思いました。
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